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心理学の研究結果、6割以上が再現不可能  

心理学の研究結果、6割以上が再現不可能 検証調査
AFP=時事 8月28日(金)13時19分配信


【AFP=時事】人がどのように行動したり思考したりするかに関する科学的研究は、外部専門家らによる研究結果の再現が不可能なものが多いとの研究報告が27日、発表された。心理学研究の信頼性に関する新たな疑問を浮上させる結果だという。

科学者270人からなる研究チームは、2008年に米国の主要査読学術誌3誌に発表された心理学と社会科学の研究論文100件について、その結果の再現を試みた。

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された調査結果によると、元の研究論文と同じ結果が得られたのは、全体の39%にすぎなかったという。

 調査対象論文の研究テーマの範囲は、人々の社会生活や他者との交流から、知覚、意識、記憶などに関する研究までに及ぶものだった。

 サイエンス誌の編集主任を務める心理学者のギルバート・チン(Gilbert Chin)氏は「今回のいささか落胆させられる結果については、各学説の妥当性や虚偽性に直接言及するものではないことに留意する必要がある」と話す。しかし、その一方で「今回の結果が実際に示しているのは、原著論文の実験結果の多くに関して、それほど信頼を置かないようにするべきということだ」とも指摘した。

 論文共同執筆者の米バージニア大学(University of Virginia)のブライアン・ノセック(Brian Nosek)氏によると、科学者らが常に自らに問いかける必要があることを、今回の研究は示しているという。

 ノセック氏は、記者会見で「科学的な主張が信用できるものとなる根拠は、それを生み出した人の地位や権威ではない」と述べ、「科学的主張の信頼性は、その主張の根拠となる証拠の再現性に部分的に依存している」と語った。

 問題が生じる恐れがあるのは、科学者らが「有意」と考えられるもののみを含めるために自説に都合の良いデータだけを選び出す場合や、研究規模が非常に小さいために偽陰性や偽陽性が発生する場合などだ。

 ノセック氏によると、科学者らは自身の研究成果を主要学術誌に定期的に発表する必要に迫られており、このプロセスが実態の歪曲(わいきょく)につながる可能性があるという。

「研究していることすべてが発表に至るわけではない。新規性があり、肯定的で、整然とした結果が査読を通過する可能性が高く、これは、自説にそぐわない否定的な結果や研究を除外するという発表の偏向につながる恐れがある」とノセック氏は説明。そして「これが大規模に行われると、発表される文献が実態より見栄えの良いものになる可能性がある」と続けた。【翻訳編集】 AFPBB News
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Posted on 2015/08/29 Sat. 01:15 [edit]

category: 雑記

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看護教育における心理学教育  

Nurse Educ Pract誌(2012年11月)から

看護教育における心理学教育:アプローチ、問題、現在の実践に関するレビューと考察。

Psychology teaching in nursing education: a review of and reflection on approaches, issues, and contemporary practice.

de Vries JM, Timmins F

Nurse Educ Pract. 2012 Nov;12(6):316-21

原文はこちら


背景:

本稿では、看護師における心理学の意義と看護教育に不可欠な要素としての心理学の導入をめぐる問題について主に取り上げる。

心理学が看護教育にどの程度導入されているかは国によって大きく異なることから、この問題に関する議論と考察が必要であることが示唆される。

目的:

本稿では、(a)教育分野で看護の心理学について取り上げている学術的な英語文献を検討、考察し、(b)アイルランドの看護師・助産師学校での心理学教育の例を示して考察することを目的とした。

方法:

多様なデータベースを検索し、1906~2011年までの看護の教科書に記載されている心理学の内容を分析して文献レビューを行った。

この結果は、特定の事例について考察するための枠組みとして用いた。

結果:

レビューによって得られた文献は、論評、解説、教科書のレビュー、論説が非常に多く、実証研究はほとんどなかった。

文献で最もよく登場したトピックが3つ確認された。それは、看護カリキュラムにおける心理学の意義、取り上げる範囲の深さと内容、心理学の授業を他領域と統合して実施するか、独立して行うかの選択だった。

結論:

今回の結果から、全体として看護教育における心理学の意義に関して異論はないが、心理学の教育方法や統合する方法に関しては議論のあることが示唆された。

これらの議論については、現在のところ結論が出ていない。

教員が以上の点に関して積極的に議論、考察することが推奨される。また、実証的なエビデンスが欠如しているために、このような議論、考察が妨げられている。

Posted on 2015/08/22 Sat. 00:13 [edit]

category: 医療系の教育

tag: 看護  心理学教育 
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大卒の看護師が多く、看護師の負担が低いほど院内死亡率が低下  

Lancet誌2014年5月24日号から

欧州9ヶ国における看護師の配置および学歴と院内死亡率:レトロスペクティブな観察研究

Nurse staffing and education and hospital mortality in nine European countries: a retrospective observational study

Linda H Aiken, et al.

The Lancet, Volume 383, Issue 9931, Pages 1824 - 1830, 24 May 2014

原文はこちら

背景

病院の経費を最小限に抑えるための緊縮政策と医療制度の再設計は、患者の転帰に悪影響を及ぼすリスクがある。

今回のRN4CAST試験は、病院の運営コストの中で最も大きな要素の1つである看護に関する意思決定に関して情報提供するために実施された。

本試験では、類似した患者の退院データを保有するRN4CAST試験に参加した12ヶ国のうち9ヶ国において、患者/看護師の比および看護師の学歴の違いが、一般的な外科手術後の院内死亡率と関連しているかどうかを評価することを目的とした。

方法

今回の観察研究では、欧州9ヶ国の病院300施設で一般的な外科手術を受けた、50歳以上の患者42万2730例の退院データを収集した。

管理データを標準的なプロトコル(国際疾病分類第9版または10版)でコード化し、30日の時点における院内死亡率を推定した。その際、次のリスク因子で補正した(年齢、性別、入院のタイプ、外科手術の種類を示す43個のダミー変数、入院時の共存症を示す17個のダミー変数)。

研究対象とした病院に勤務する看護師2万6516人の配置と学歴について調査した。

入院から30日以内の手術患者の死亡率に影響を与える看護側の要因について評価するために、病院および患者の特徴など看護以外の変数で補正を行う前と後とで、一般化推定方程式(generalised estimating equations)を用いて解析した。

結果

患者1例あたりの看護師の業務量が増加するほど、入院30日以内の入院患者の死亡率が7%上昇していた(オッズ比:1.068、95%信頼区間[CI]:1.031~1.106)。

また、大卒の看護師数が10%増加するごとに院内死亡率が7%減少していた(オッズ比:0.929、95%CI:0.886~0.973)。

看護師の60%が大卒で、看護師が平均6例の患者を担当する病院では、大卒の看護師が30%しかおらず、看護師が平均8例の患者を担当する病院よりも、患者の死亡率が約30%低かった。

考察

コスト削減のために看護スタッフを削減することは、患者の転帰に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、看護師の大学教育に力を入れることは予防可能な院内死亡を減少させる可能性がある。

Posted on 2015/08/20 Thu. 19:53 [edit]

category: 医療系の教育

tag: 看護 
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医学教育とコミュニケーション・スキル  

N Engl J Med誌 2015年4月23日号「Perspective」から

Getting the Right Medical Students ?
Nature versus Nurture

まともな医学生に育っているのか?
氏か育ちか

著者:Richard M. Schwartzstein, M.D.

N Engl J Med 2015; 372:1586-1587April 23, 2015

原文はこちら


ビデオに患者と面接中の医学部4年生が映っている。

その学生は少しぎこちなく、専門用語を使い、不適切なボディランゲージを用いていた。

指導教員はこう問いかけた。「私たちはどうしてこの学生を医学部に入れたんだろう?」

それからこう続けた。「どこに行っても、役人からこういう話を聞く。医師は患者にほとんど共感を示さず、患者と適切なコミュニケーションがとれない、と。医学部はこの問題を解決しなければならない。もっと人間性豊かな学生を入学試験で選抜する必要がある」

多くの患者が医師の対人スキルの低さについて不満を述べているため、この問題は否定しがたい。

完璧な入学試験はない。

医学部に入学した学生の中にはほとんど共感を示さないか、有能な医師に不可欠のコミュニケーション・スキルが欠けている者もいるだろう。-しかし、これがこの問題の一番の原因なのだろうか?

入学した学生の中に対人スキルが低い者がいるという仮定によって、新たな面接法と入学試験の方針をつくる動きが起こった。

医療従事者の多様性を高めることを目的の1つとした「全体的入学試験(Holistic admission)」と「多面的ミニ面接(multiple mini-interview)」という手法が広く用いられるようになってきている。

受験者が倫理的な問題、医療サービスが行き届いていない人々に対する懸念、適切なコミュニケーション・スキルについて深い理解があるかどうかを判定しようとする限りでは、これらの手法は、患者と関係をつくれる医師を卒業させる重要なステップであると言われてる。

また、対人スキルが欠けていると考えられる学生を選別することを目的とした医学部入学適性試験(MCAT: Medical College Admission Test)を改訂する努力が行われている。この試験はsimilar attributesつまり「対人能力」について学生を評価するものである。

MCATには行動科学および社会科学を取り上げたセクションが追加されたが、これは大学でこれらの分野をより深く学ばせることで、人間のありように対する洞察力の高い医学生が育成できるという総意を反映したものである(1) (この文献の抄録の日本語訳を下記に掲載)。

医学部に入学する時点で「最良」の学生を選択することは難しく、そのため入試委員会は、試験方法を改善する新たなアイデアを歓迎する。

しかし最近の新しい方法の一部には、入試を資源集約的にさせるだけではなく、さらに教育の専門家に次のような誤った二分法を採用させる場合もある。「あなたは、頭の良い医師と共感性の高い医師のどちらに担当してもらいたいですか?」

個人的には、自分の担当医にも(そして指導している医学生にも)両方を兼ね備えていて欲しい。

私としては、医師と患者の関係におけるこの問題の原因は、上記のような対処法に含まれるものよりも複雑であると考えている。それゆえ、医学部は不適切な学生を入学させているという仮定に疑問をもつべきだろう。他の解決策を検討すべきである。

概して、学生は医学部に入学する時点では理想主義的で、人間の病的状態を改善したいと思っており、医師になろうと張り切っている。

そして教員は、学生を変えるために様々なことをする。

医学部では、大量の(または少なくとも医学教育で目標とみなされているだけの)知識を学生に覚えさせ、患者との関わりは後回しにし、学生は、臨床の収益を上げるために強いプレッシャーをかけられ、挫折感に陥り、打ちのめされた学部教員にさらされる。

そして、学生の共感性は低下する(2) (この文献の抄録の日本語訳を下記に掲載)。

幸いにも、多くの医学部で、これらの問題の一部に対処するためのカリキュラムの改革が進行中であり、いくつかの報告では、人間性の面での質の低下が予防できることが示唆されている(3) (この文献の抄録の日本語訳を下記に掲載)。

早期に臨床を経験させるカリキュラムが広がっており、また「反転授業」などの教育法によって、授業内の学習がより興味のもてるようなものになり、現実の問題に直結したものとなりつつある。

こういった改革にもかかわらず、学生の中には患者と関係をつくる能力が認められない者もいるだろう。その場合どうなるのか?

これまでの報告によると、医学部に入学した学生の3%弱が学業的な理由のために卒業できない(4)。

上述したビデオの学生に対して、私が最初に抱いた疑問はこういうものだった。「この学生はどうやって4年生までたどり着いたのか?」

コミュニケーションや対人スキルは必須の能力である。

学生にこの能力が認められない場合、改善の努力を行うべきである。そして失敗した場合は、こういった学生の卒業を許可すべきではない。

しかし、医学部は学生を落第させるのを嫌がる。

医学部の教員は、患者に対する医師の義務と同じように学生に対して義務があるとみなしていることが示唆されている。教員は決して学生を見捨てない。

またおそらく、医学生は一般に3年生または4年生で相当な借金を背負うため、卒業できなかったら、学生はどうなるだろうかと教員は心配する。

また、コミュニケーションなどの定量化が容易ではないスキルが欠けている学生を進級または卒業させないことで生じる訴訟に対する懸念も影響を与えている。

このような理由とは関係なく、患者と関係をつくる能力がない医師を卒業させたら、それはすべて医学部の教員のせいである。

一方、効果的かつ感受性豊かに患者とコミュニケーションできて、思いやりが損なわれることなく卒業した場合、その学生には何が起こるだろうか?

現代の医療体制では、医師は時間の制約のある中で患者と関わらざるを得ない。そういった関わりによって、思いやりのある大部分の医師ですらそういうトレーニングをせざるを得なくなる。

例えば最近、私は、ある中年女性の外来診療に20分の時間をとっていた。この女性はリウマチの問題と新たに心肺の合併症の所見が認められる患者だった。彼女を最後に診察したのは去年だった。

私は待合い室で彼女を出迎え、診察室に招き入れた。そこで彼女はこう語った。夫が最近癌と診断され、来週、手術の予定だと。彼女は涙ぐみ、ひどく動揺していて、家族を心配していた。

私は、彼女の感情を受け止め、慰め、彼女が経験したことを1つ1つ確認し、利用できるサポートについて尋ねた。

この時点で13分経過した。

次に、彼女の症状と機能状態について話し合い、投薬を調整した。それから検査着に着替えてもらって診察し、また服を着替えてもらった。

この時点で20分経過。

その後、最新の検査結果を検討し、彼女の質問に答え、次の段階の治療について話し合った。

最終的に診察には35分かかり、予定より大幅に遅れたため、その後の予約患者には予定の遅れについてあれこれと考えさせてしまうことになった。

医学生が一緒にいて、診察について感想を聞くような場合だったら、この診察をどのくらい続けただろうか? 私は、学生に幻滅を感じさせつつ、「仕事を済ませることだけ」を強いられているような時間のプレッシャーを感じただろうか?

私の経験では、外来診療は常に、特別なニーズをもつ最低でも1人の患者によって中断されるものである。

どうやって時間を埋め合わせるか?

医療の体制を考えると、医師と患者のコミュニケーションが問題だといったら、驚くだろうか?

医師と患者のコミュニケーションを改善しようとするなら、医学部の入学試験の方法を改良すること以上にやるべきことがあると思われる。ちなみに、入試方法を改良することは、すでに医学部で学んでいる学生達に自分は医療にとって「ふさわしい」人間ではないかもしれないというメッセージを伝えていることになる。

また実際のところ、適切な態度、思いやり、スキルを持ち続けて卒業した学生を害することに多くの時間をかけることよりも他にやらなければならないことがあると私は考える。(下記の「医学部において思いやりとコミュニケーション・スキルを維持させる方法」を参照)

第1に、医学部の教員は、学生が医学部に入学する理由となった理想主義や思いやり、患者中心の姿勢をはっきりと賞賛し、支持したらよいのではないだろうか。

現在進行中のカリキュラムの改革に加え、学生が運営するクリニックに学生を参加させることが検討されている。これは、多くの場合、臨床での経験によって医師に求められる資質と価値観を維持し続けることができるためである(5) (この文献の日本語訳を下記に掲載)。

第2に、上記の価値観を傷つけるのではなく、サポートできる能力をもっているかどうかで、学生を指導する臨床の教員が選ばれ、この能力を向上させるためのトレーニングを教員に受けさせることを保証すればよいのではないか。

不適切な行動をとり続け、不適切なモデルとなってしまうような教員は、学生と関わらせてはいけない。

医学生を教えることは特権であり、この職務に選ばれた者には高い期待がかけられていることをはっきりと示したらよい。

第3に、教員が対人スキルを評価できるような客観的な測定方法を改良し続け、こういったアセスメントを確実に実施できるような教員の能力開発(FD: faculty development)を提供し、患者中心のケアのために必要なスキルが欠けている学生が進級できないようにすることである。

教員がこれらの面で至らない学生を報告した場合、続いて起こるだろう学生がアセスメントに異議を唱えるという難しい時に、我々は教員をサポートすることができる。

最後に、効果的なコミュニケーションが必要な患者と関わる時間を医師が確保できるように、このような体制や財政的および後方支援を確立するために政策レベルで取り組み続けることである。

日常診療の現実によって医師が患者と意味のある関係をつくることができないならば、識別力のある入試方法とその後の観念的で実用性に欠けるトレーニングのほとんどは、依然として我々の目標には及ばないだろう。

医学部において思いやりとコミュニケーション・スキルを維持させる方法

・学生の理想主義、思いやり、患者中心の姿勢を支持するカリキュラムの改革を実施する。例えば早い段階で臨床を経験させたり、学生が運営するクリニックに参加させる。

・望ましい価値観を支持する能力のある臨床の教員を選ぶ。

・対人スキルを評価する測定方法を改良し、こういったアセスメントを実施する教員をサポートして、患者中心のケアのために必要なスキルが欠けている学生が進級できないようにする。

・医師が患者との関わりにもっと多くの時間をかけられるように財政的および後方支援システムを支持する。

<参考文献>
(1) 
Schwartzstein RM, Rosenfeld GC, Hilborn R, Oyewole SH, Mitchell K.

Redesigning the MCAT exam: balancing multiple perspectives.

Acad Med 2013;88:560-7.

原文はこちら

MCAT試験の再設計:複合的視点のバランスをとる

抄録
この論評の著者らは、1991年から用いられている現行の医学部入学適性試験(MCAT: Medical College Admission Test)の最近完成した概説について考察し、2015年に導入予定の新たな試験の青写真について報告する。

MCAT試験の設計は、医学教育、医学、保健医療サービス、米国とカナダの医学部卒業生が対応する患者のニーズにおける変化を反映している。

本稿では、どのようにして新たな試験の野心的な目標のバランスをとるか、また青写真の設計を複雑にしている試験プログラムに関与する多くの利害関係者の多様な優先度のバランスをどうとるのかということについて述べる。

新たな試験プログラムの関係者は、設計の過程と協議の特徴であった対立とバランス、そして青写真を形づくるデータについて議論している。

MCAT試験の青写真では、医学部に入学する学生が成功するために不可欠な自然科学、社会科学、行動科学、批判的分析と推論能力といった広範囲にわたる能力のアセスメントのバランスがとられている。

この試験には4つのセクションがある。生物の生物学的および生化学的基礎、生物の化学的および物理学的基礎、行動の心理学的、社会学的、生物学的基礎、批判的分析と推論能力である。

また本稿では、入学試験委員会への推奨を示し、入試委員会が、全体的入学試験(holistic admission process)の一部として、また各大学の教育、科学、臨床、サービス志向の各目標に関連させて受験者の試験得点、演習、それ以外の学業、個人、経験に関する経歴を審査するよう助言している。

(2) 
Woloschuk W, Harasym PH, Temple W.

Attitude change during medical school: a cohort study.

Med Educ 2004;38:522-34.

原文はこちら

医学部在学中の態度変化:コホート研究

抄録

背景:
態度は行動に影響を与える。医学生としての適切な態度の開発、維持は、学生が医師の役割を担った時に、患者に提供する医療の質に影響を与えるだろう。
学生が医学部で進級していく過程で、学生の態度スコアがどのくらい変化していくかに関しては縦断的な研究報告がほとんどない。

目的:
本研究では、大規模な学生コホートを対象に、学生が進級していく過程における態度スコアの変化について検討した。
学生の性別が態度変化と関連するかどうかについても検討した。

方法:
3学年(1999~2001年度)の医学生を本研究の対象とした。
2つの評価尺度(医療における社会問題への態度[Attitudes Toward Social Issues in Medicine]とin-houseの評価尺度である医療技術質問票[Medical Skills Questionnaire])に回答させた。
この評価尺度は、医学部の課程での3つの重要な段階(入学時、前臨床の課程の終了時、臨床実習の終了時)で実施した。

結果:
信頼性は、態度スコア全体で0.82~0.91、下位尺度で0.41~0.81で、許容範囲であった。
平均態度スコアの多変量分散分析の結果、医学教育の課程で進級するにつれて、いくつかの態度スコアで持続的な低下が認められた。
女性の態度スコアは男性より高かった。

結論:
学生は進級するにつれて態度スコアが低下する。
態度スコアの変化の理由は明らかではないが、入学時点の高い態度スコアが上限であること、理想主義の喪失、予想外のカリキュラムの影響などが関連していると思われる。
学生の態度に対する医学教育の影響についてさらなる研究が必要である。

(3)
Krupat E, Pelletier S, Alexander EK, Hirsh D, Ogur B, Schwartzstein R.

Can changes in the principal clinical year prevent the erosion of students’ patient-centered beliefs?

Acad Med 2009;84:582-6.

原文はこちら


主要臨床実習期間(principal clinical year)の改革は学生の患者中心の信念の減退を予防できるか?

抄録

目的:
医学部3年次では、学生は伝統的に病院実習による臨床医学の最初の洗礼を受け、その結果医療や患者のケアに対する態度が減退することが多い。
本稿では、臨床実習を改良することで学生が否定的な影響に抵抗できるようになることを目指した予備プログラムから2005~2006年の学年度に収集したデータを報告する。

方法:
学年度開始時に、3つの臨床実習施設の1つで全ての主要臨床経験(PCE: principal clinical experience)を実習している32人のハーバード大学医学部生に(PCE群)、患者中心の態度を測定する患者-医師志向性尺度(PPOS: Patient-Practitioner Orientation Scale)に回答させた。
学年度終了時に再びPPOSに回答させた。同時に、患者中心の臨床経験の潜在的カリキュラムを測定するコミュニティー、カリキュラム、文化(Community、Curriculum, and Culture[C3])にも回答させた。
これらの評価尺度のスコアは、従来どおりに施設から施設へ移ってローテーションで実習を行う学生(対照群)と比較した。

結果:
学年度開始時に、PCE群内またはPCE群と対照群の間でPPOSに差は見られなかった。
従来の実習を行った学生では、学年度終了時点で患者中心の態度が有意に低下していた。一方、PCE群の学生の態度に変化は見られなかった。
PCE群の学生は、自分の患者中心の行動を支持されることが多かったと報告した。
学生全体で、C3スコアとPPOSスコアの変化は有意に相関していた。

結論:
臨床教育の刷新は、医学生の態度の減退に対する予防となるだろう。
本研究は小規模の予備プログラムの検討であったが、臨床実習施設全体と研究中の教育モデルで認められた結果の一貫したパターンから、たびたび指摘されてきた主要臨床実習中での否定的な影響は回避可能なものであるという示唆に富むエビデンスが示された。

(4) 
Graduation rates and attrition factors for U.S. medical school students.

Washington, DC: Association of American Medical Colleges, May 2014

原文はこちら

米国の医学生の卒業率と疲弊因子


(5) 
Smith S, Thomas R III, Cruz M, Griggs R, Moscato B, Ferrara A.

Presence and characteristics of student-run free clinics in medical schools.

JAMA 2014;312:2407-10.

原文はこちら

医学生が運営する無料クリニックの存在と特徴。

緒言:
学生が運営する無料クリニック(SRFC: Student-run free clinic)は医学部で一般的であるが(1-6)、こういったクリニックの現状については十分に報告されていない。

SRFCに関する最初の全国的な調査は2005年に実施され、Association of American Medical Colleges (AAMC) の49の所属大学で111施設のSRFCがあることが報告されている(1)。

本研究では、医学部でSRFCが増加しているかどうかを評価し、SRFCの特徴について報告するために調査を実施した。

方法:
我々は、最初の調査(1)の構想、文献レビュー、全国のSRFCのリーダーによる継続中の議論を踏まえて調査票を開発し、予備調査を実施して改訂した。

最終版の調査票は、「はい・いいえ」の2択、多肢選択、自由記述の回答形式による39項目から構成されていた。

学生運営無料クリニック協会(Society of Student-Run Free Clinics)を通じて、SRFCとその医学生のリーダーを特定した。

連絡先が米国AAMCの所属大学のSRFCではなかった場合は、SRFCの有無を確認し、無料クリニックの学生リーダーを特定するために、電話または電子メールで学生課に問い合わせた。

2011年12月から2014年4月に、SRFCのある米国AAMCの各所属大学からSRFCの学生リーダーに電子メールを送り、ウェブベースの質問票に回答するよう依頼した。

各大学がその大学附属の全てのSRFCのデータをまとめて回答するよう依頼した。

回答者には、他の学生または学部から情報を求めること、可能ならば実際の数値または最良な推定値を報告するよう勧めた。

調査票はSupplementで閲覧できる

記述統計によってデータを解析した(Excel 14.2.5、マイクロソフト社)。

「はい・いいえ」の2択または多肢選択式の質問では、回答数に基づいて割合を算出した。欠損データは、それに応じて回答者の分母を減らして算出した。

自由記述式の質問では、内容が同様の回答の場合には、2人の著者(S.S.とR.T.)が独立して検討し、回答をコード化し、2人が合意が達するまで比較した。

結果:
141校の米国AAMCの所属大学のうち106校(75.2%)にSRFCがあった。調査回答率は81.1%(86/106校)であった。大学2校は、同じ1箇所のSRFCを共同運営しているため、1つの調査票に共同で回答した。それゆえ、各調査項目の最大回答数は85であった。多肢選択式の問題では77~85、多肢選択式で予算に関連した項目は49~74、自由記述式では60~67であった。

回答のあった86校で208箇所のSRFCがあった。

クリニックの運営に関する詳細を表1に示す。

回答によると、1年生から4年生の医学生の半数以上がSRFCに関わっていた(平均[標準偏差SD]:57.8%[27.9%])。

大学の53%(43/81校)では、SRFCへの参加が履修単位に設定されていなかった。

自由記述式の回答では、学生は、SRFCの最大の強みとして、サービスが行き届いていない患者の役に立てる(50/60回答数、83.3%)、学生の教育に役に立つ(47/60、78.3%)と考えていた。

最大の課題は、十分な教員スタッフの確保(26/60、43.3%)と資金(19/60、31.7%)であった。

考察:
SRFCのあるAAMCの所属大学の数は、9年前に実施された最後の全国調査(1)から2倍以上に増加しており、現在、SRFCは医学部の75%以上に存在する。

多くの大学では履修単位に設定していないにもかかわらず、ほとんどの医学生はSRFCでボランティアで働いている。

これからの医師の教育ではSRFCがどの大学でも導入されていくことを考えると、SRFCによる教育および臨床面での成果を評価するためにさらなる研究が必要である。

小規模の単一施設のSRFC研究では、糖尿病、高血圧、精神保健において患者ケアの質が高いことが報告されている(4-6)。

今回の調査では、整骨療法の学校や学際的な学校が主導する多くのSRFCを対象としなかった。

本研究の限界としては、データ収集が学生リーダーの自己報告によるものだったこと、そして項目ごとの回答数にばらつきがあったことなどが挙げられる。

SRFCで最も大きな課題とみなされた資金の不足と教員の監督不足は対処可能なものである。なぜなら、大学の支援は、この先何年にもわたって教育の機会の安定と改善に役立つ可能性があるためである。




Posted on 2015/08/19 Wed. 05:20 [edit]

category: 医療系の教育

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