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複雑な精神障害では短期の治療より長期の精神分析療法が効果的:新たなメタ解析の結果から  

Psychodynamic Psychiatry誌(2013年秋)から

長期の精神力動的治療に関する新たなエビデンス

The emerging evidence for long-term psychodynamic therapy

Leichsenring F, et al.

Psychodynamic Psychiatry: Vol. 41, No. 3, pp. 361-384.

原文はこちら


特定の精神障害における短期の精神力動的精神療法(STPP)と長期の精神力動的精神療法(LTPP)の有効性を支持する無作為比較試験(RCT)によるエビデンスが増加している。

最初の一連のメタ解析では、LTPPは、特に複雑な精神障害では短期の精神療法よりも優れることが示された。

しかし、このLTPPのエビデンスには異議が唱えられている。

この提起された懸念への取り組みが行われたが、その後Smitら(2012)による最近のメタ解析で、再びLTPPの有効性に異議が唱えられている。

方法:

方法論的な観点から、Smitらのメタ解析に対して批判的に解析した。

さらに、本研究では、これまでのメタ解析には含まれていなかった試験を追加して、新たに2つのメタ解析を行った。

本研究の目的は、これまでのメタ解析の結果が安定したものであるか否かについて検討することであった。

結果:

Smitらによるメタ解析では、実際のところ、異なる選択基準によって、LTPPと他のタイプの長期の精神療法が比較された。

したがって、Smitらが示した本質的なものは、LTPPの効果は、他のタイプの長期的な治療と同等であったということである。

そのため、Smitらによるメタ解析は、LTPPは短期の精神療法よりも優れることを示した過去のメタ解析の結果に異議を唱えるものではない。

また、Smitらのメタ解析では、いくつかの方法論的な欠点が認められた。

本研究で行った新たなメタ解析では、これまでの結果との有意な違いは見いだされなかった。

複雑な精神障害では、LTPPが短期の治療よりも有意に優れることが立証された。これは、これまでのメタ解析の結果を裏づけるものである。

結論:

量‐効果関係に関するデータから、慢性精神障害やパーソナリティ障害などの複雑な精神障害患者の多くでは、短期の精神療法では不十分であることが示唆される。

これらの患者には長期的な治療が適応されるだろう。

本研究のメタ解析は、複雑な精神障害患者においてLTPPをさらに支持するものであった。

それでもやはり、LTPPと他の長期的な精神療法に関してさらなる研究が必要とされる。

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Posted on 2015/01/25 Sun. 01:50 [edit]

category: 精神分析の効果

tag: 精神療法  精神分析  メタ解析  治療効果 
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長期の精神分析的精神療法の効果は限定的:無作為化試験のメタ解析の結果から  

Clinical Psychology Review誌(2012年3月)から

長期の精神分析的精神療法の効果-無作為比較試験のメタ解析

The effectiveness of long-term psychoanalytic psychotherapy-a meta-analysis of randomized controlled trials

Smit Y, et al.

Clinical Psychology Review Volume 32, Issue 2, March 2012, Pages 81-92

原文はこちら

精神分析療法および長期の精神分析的精神療法(LTPP)の効果に関しては議論の余地がある。

本研究では、明確に定義した精神障害患者において、他の治療法または無治療と比較して、LTPPの効果を評価した。

LTPPに関する無作為比較試験または準無作為比較試験を選択した。

2名の著者が独立して、解析対象とする試験を同定した。

11件の試験が適格だった。

利用可能な最長の追跡時点での回復(主要アウトカム)のリスク差は0.00(95%信頼区間[CI]:-0.17~0.17、p=0.96、I2乗:58%)だった。

統合したHedges' g(各試験の最長の追跡時点での)は以下のとおりであった。

治療の対象とした問題では-0.05(95%CI:-0.55~0.46、p=0.86、I2乗=88%)、

全般的な精神医学的症状では0.69(95%CI:-0.19~1.57、p=0.13、I2乗=96%)、

パーソナリティの病理では0.17(95%CI:-0.25~0.59、p=0.42、I2乗=41%)、

社会的機能では0.20(95%CI:-0.10~0.50、p=0.19、I2乗=53%)、

全体の効果では0.33(95%CI:-0.31~0.96、p=0.32、I2乗=94%)、

QOLでは-0.37(95%CI:-0.78~0.04、p=0.08、I2乗=55%)。

この領域の対象とした問題に関するサブグループ解析では、専門的な精神療法の構成要素のない対照治療と比較した場合には、LTPPの方が有意に良好であることが示されたが、様々な専門的な精神療法による対照治療と比較した場合には示されなかった。

探索的なメタ回帰により、介入群と対照群での治療強度の違い(面接回数の比[session ratio])と効果量に関連性のあることが示唆された。

以上のことから、様々な精神障害の回復率は、LTPPまたは通常治療を含めた様々な対照治療で同等であるという結論が下される。

個々の試験の効果量は、方向や大きさの点で大幅に異なっていた。

これまでのレビューとは対照的に、LTPPの効果は限られたもので、よくても矛盾が見られるというエビデンスが認められた。

要点

◆長期の精神分析的精神療法(LTPP)の効果に関しては議論の余地がある。

◆最近の2件のメタ解析では、LTPPの効果が実証されたと報告されている。

◆今回のメタ解析では、回復率はLTPPと対照治療で同等だった。

◆本研究では、LTPPの効果は限られたもので、矛盾が認められるというエビデンスが見いだされた。


Posted on 2015/01/23 Fri. 00:16 [edit]

category: 精神分析の効果

tag: 精神療法  精神分析  メタ解析  治療効果 
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長期の精神力動的精神療法は複雑な精神障害の治療に効果あり:メタ解析の結果から  

JAMA誌(2008年10月)から

長期の精神力動的精神療法の効果:メタ解析

Effectiveness of long-term psychodynamic psychotherapy: a meta-analysis

Leichsenring F, Rabung S.

JAMA. 2008 Oct 1;300(13):1551-65.

原文はこちら


背景:

精神医学での長期の精神力動的精神療法(LTPP)の位置づけに関しては議論の余地がある。

LTPPに関する説得力のあるアウトカム研究が不足している。

目的:

本研究では、メタ解析を用いて、特に複雑な精神障害(complex mental disorders)、例えば、パーソナリティ障害、慢性精神障害、複数の精神障害(multiple mental disorders)、抑うつおよび不安障害の複合(すなわち慢性の経過および/または複数の精神障害を伴うもの)において、LTPPの効果を検討することを目的とした。

データ・ソース:

1960年1月1日~2008年5月31日までに発表されたLTPPの試験を、MEDLINE、PsycINFO、Current Contentsを用いて、コンピュータ処理による検索によって同定した。また、この分野の専門家と連絡をとることで補足した。

試験の選択:

最低でも1年間継続するか、面接回数が50回以上の個人を対象とした精神力動的精神療法を用いて、プロスペクティブな試験デザインで実施され、信頼性が高いアウトカムが報告された試験のみを対象とした。

無作為比較試験(RCT)と観察研究を検討の対象とした。

計1053例の患者を対象とした23件の試験が選択された(11件のRCTと12件の観察研究)。

データ抽出:

試験の特徴と治療アウトカムに関する情報は、2名の独立した評価者が抽出した。

効果量は、全体の効果、治療の対象とした問題、全般的な精神医学的症状、パーソナリティ機能、社会的機能に関して算出した。

アウトカムの安定性を検討するために、効果量は、治療終了と追跡評価の2つの時点で別々に算出した。

結果:

対照試験の比較分析を行ったところ、LTPPは、全体の効果、治療の対象とした問題、パーソナリティ機能において短期の精神療法よりもアウトカムが有意に良好だった。

全体の効果では、群間の効果量が1.8(95%信頼区間:0.7~3.4)であった。これは、LTPPによる治療後、複雑な精神障害患者は、平均すると対照群の患者の96%よりもアウトカムが良好であったことを示すものである(P=0.002)。

サブグループ解析を行ったところ、LTPPでは、多様で特に複雑な精神障害全体で、有意かつ大きく、安定した群内の効果量が得られた(範囲:0.78~1.98)。

結論:

LTPPは複雑な精神障害の効果的な治療法であるというエビデンスが認められた。

さらなる研究では、特定の精神障害におけるLTPPのアウトカムについて検討し、また費用効果分析を含める必要がある。


Posted on 2015/01/22 Thu. 23:15 [edit]

category: 精神分析の効果

tag: 精神療法  精神分析  メタ解析  治療効果 
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アドバイスの罠  

「とにかくこうしなさい!」というアドバイスの罠:なぜ相談番組の「ドクター」はほとんど役に立たないのか。

「ドクター」は、なぜ相談者の問題を解決できないのか。

Scientific American Mind誌2010年9月/10月号から

2010年8月19日

ハル・アルコビッツ(アリゾナ大学心理学教授)、スコット・O・リリエンフェルド(エモリー大学心理学教授)

原文はこちら

結婚生活14年の女性がドクター・ローラのラジオ相談番組に電話をかけてきた。

その女性は、最近になって夫を愛していないことに気づき、夫にそのことを話した、とドクター・ローラに語った。

このケースを記録したYouTubeの動画を見ると、夫婦は結婚カウンセリングを受けていたが、ドクター・ローラは、あなたがそのような態度なら、カウンセリングは役に立たないと伝えた。

会話は次のように続く。

ドクター・ローラ:「何かご質問がありますか?」

相談者:「何かアドバイスをいただけますか? 私はどうしたら・・・?」

ドクター・ローラ(さえぎって):「遅いわよ。もう遅いの。あなたは冷酷よ」

相談者:「その時は・・・」

ドクター・ローラ(再びさえぎって):「毎日ただひたすら思いやりを示して、彼に償おうとしなさい。たぶん、あなたは、私が思うに他者に同情する部分がちょうど壊れているんでしょうね」

2009年4月1日から始まったドクター・フィルのテレビ番組での相談者は、子どもに対して強い怒りを感じて、時に子どもを叩いてしまうために助けを求めていた。

ドクター・フィルは、この相談者にこうアドバイスしている。

「あなたは叩くのをやめられますよ。
他の人のためなんだから、やめられます・・・。
やめたくないわけじゃないでしょう。
あなたは、やめないだけなんですよ・・・」

ドクター・ローラ・シュレシンジャーとドクター・フィル・マグローの番組に参加する人達は、様々な個人的な問題で援助を求めている。そして、2人は多くの人にアドバイスする。

今年前半、ドクター・ローラの視聴者参加番組は、週に900万人以上が聞いていた。

同じ時期、ドクター・フィルの番組は、1回の放送につき約400万人が視聴していた。

2人とも心理療法を行っているとは公言していない。

おまけに、シュレシンジャーとマグローの個人の問題に関する典型的な意見は、心理学の研究知見の多くと食い違っている。そうなると、2人の忠告は、ほとんどの場合、効果がなさそうであり、また損害を与える可能性すらあると思われる。

シュレシンジャーは、結婚・子ども・家族カウンセリングの分野でカリフォルニア州の資格をもっているが、彼女の博士号(ドクター)は、生理学のもので、心理学のものではない。

そのため、「ドクター」を使うことは、シュレシンジャーが個人にアドバイスを提供する資格としての「博士号(ドクター)」を持っているという誤解を与えることになる。

マグローは心理学の博士号をもっており、2006年まではテキサス州の心理学の資格をもっていた。しかし、2006年に彼の資格の期限は切れている。

相談者を非難すること

マグローもシュレシンジャーも、個人の責任を強調するのが正しいと考え、問題の原因が他にあるとは考えない。

さらに、彼らは、ほとんどの場合、極端なまでに個人の責任にする。

心理的な問題には遺伝子の構造、生い立ち、現在の状況といった要因がかなり影響しているのは事実である。しかし、こういう彼らの態度は、そういった場合でも、人間は自分の問題のすべてに責任がある、と言っているようである。

何にもまして個人でコントロールすることを強調すると、人間は、自分以外の問題や状況について詳しく考えてみようとしなくなる。

しかし、自分以外の問題や状況が、自分の抱えている問題に関係していて、対処する必要があるかもしれないのだ。

シュレシンジャーとマグローのやり方には他にも欠点がある。

それは共感がないことである。共感とは、相手の立場から、その人の考えや感情、困難さを理解しようとする気持ちである。

シュレシンジャーは、だいたいにおいて相談者と数分しか話さない。さらに、相談者の話をさえぎることが多く、相談者の行動に対して、軽蔑的な「ばか」というような言葉を使うこともある。

彼女の強い言い回しのアドバイスは、多くの場合、彼女自身の社会的に保守的な意見や宗教的な考えによるもので、相談者が直面している個別の問題のほとんどを無視していることが多い。

マグローは、相談者の話を聞くことに、シュレシンジャーよりも多少時間をかけることが多いが、どちらかといえば相談者の問題の原因とその解決についてすぐに結論を下してしまう。それは人生の複雑さへの認識がほとんどないように見える。

最近の研究では、心理社会的な問題を抱える個人を援助しようとする時に、共感の欠如が障害となることが示されている。

心理学者のアーサー・ボハート(当時カリフォルニア州立大学所属)とドミンガス・ヒルズらは、数多くの研究を定量的にレビューした2002年の論文で、治療者の高い共感性と担当患者の良好な結果には関連性があることを報告している。

精神科医デイビッド・バーンズ(当時ペンシルバニア大学医学大学院)らの1992年の研究では、原因と結果を識別するために高度な統計的手法が用いられ、治療者の共感能力は患者の経過と関連するだけでなく、患者の経過の一因となることが示されている。(訳者注:以下にこの論文のabstractの一部の和訳を記載)

共感は、心理療法の基礎をなすものである。

治療者が適切で役に立つ指導を提供するためには共感が必要となるし、患者が本当に理解されたという気持ちになることが効果をもたらすのである。

抵抗を生みだすもの

シュレシンジャーとマグローは、相談者を理解しようとしないで、対決的で指示的な態度をとることが多い。

彼らは、指示について相談者からほとんど意見を聞くことなしに、相談者がすべきこと、すべきでないことを命令するような態度で相談者に告げる。

例えば、ドクター・フィルは、2人の子どものいる30歳の女性と付き合い始めてすぐに結婚しようと考えている19歳の青年にこう話した。

「君は、絶対に、明らかに、結婚すべきではない!」

どれほど多くの視聴者がこれに賛成しようとも、数多くの研究で、治療者の指示的な態度によって、多くの患者が自分の意見に固執するようになり、そのために状況や心理的な問題が悪化する可能性すらあることが明らかにされている。

オレゴン社会学習センターの心理学者ジェラルド・パターソンとマリオン・フォーガッチは、1985年に以下のような結論を下している。

扱いの難しい子どもへの対応を母親に指導している場合、治療者が指示的な態度をとると、穏やかに励ましたり、「子どもは変わることができる」と子どもの能力に対して信頼を示すような支持的なアプローチを行った場合よりも母親は強い抵抗を示すようになる。

ニューメキシコ大学の心理学者ウィリアム・R・ミラーらの1993年の研究では、アルコール依存症の治療で、治療者が指示的で対決的な言い方をすればするほど、患者は強く抵抗するようになることが明らかにされている。

さらに、治療者が指示的であればあるほど、治療から1年後に患者が飲酒することが多くなることも示された。

ほとんどの臨床心理士は、単に患者に問題行動をやめるように言っても、ほとんど効果がないことを知っている。

実際に、シュレシンジャーやマグローのアドバイスから恩恵を受けた相談者がいたことを示すデータはない。

この2人に相談した人達の追跡調査を研究文献やインターネットで徹底的に検索したが、公式にせよ非公式にせよ1件も発見することができなかった。

シュレシンジャーやマグローが行っている相談には裏づけがない。そのため、我々は、この2人の有名人が相談者に損害をもたらしていないことを実証する必要がある、と考えている。

この2人が行うことを「娯楽」または「教育」とみなしたとしても、この必要性がなくなるわけではない。

両番組とも、メンタルヘルスの専門家が相談者を理解し、援助する方法を間違った形で伝えている。

ほとんどの心理的な問題は、単に自分でコントロールができないせいではなく、簡単な指示で変えられるものでもない。

シュレシンジャーやマグローができると信じていることによって、数百万もの人々が、自分の抱える問題の生物的、社会的な重要な原因を無視するようになり、自分自身にとっても他者にとっても効果的な治療を求めることができなくなるのである。


デイビッド・バーンズらの1992年の研究 Abstractの一部和訳

Therapeutic empathy and recovery from depression in cognitive-behavioral therapy: A structural equation model.
Burns, David D.; Nolen-Hoeksema, Susan
Journal of Consulting and Clinical Psychology, Vol 60(3), Jun 1992, 441-449.

認知行動療法における治療的な共感と抑うつからの回復:構造方程式モデル

原文はこちら

本研究では、治療的な共感には、抑うつからの回復に対して中程度以上の高い因果効果があることが、認知行動療法(CBT)で治療した185例の患者集団で実証された。

同時に、治療的な共感に対する抑うつの重症度の互恵的効果を推定したところ、この効果は非常に小さいことが示された。

さらに、治療共感の効果に加えて、ホームワークのコンプライアンスには臨床的な回復に対して独立した効果があることが認められた。

治療的な共感とホームワークのコンプライアンスを補正した場合、初心者の治療者が担当した患者は、経験を積んだ治療者が担当した患者よりも有意に改善度が低かった。

Posted on 2015/01/19 Mon. 21:11 [edit]

category: Scientific American Mind

tag: 精神療法 
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